クールダウン:沢村二世たち

2023.1.1更新

[沢村賞歴代受賞者]

年度

投手名

経歴

沢村との共通点

沢村との相違点

寸評

1947

1955

別所昭→毅彦

滝川中‐南海軍-グレートリング-ホークス

足上げ・速球

球の重さ・体型・頑丈さ・世渡り

長年投手をやっていながら肩を壊したことがないというタフネスぶり。「別所賞」ができても誰も受賞資格がない?第1回沢村賞の賞品はアルバム1冊だが、英雄の名を記した賞に身体が震えたという。

1948

中尾硯志

京都商‐ジャイアンツ

出身校・速球

ノーコン・利き腕

沢村亡き後金田正一が現れるまでの日本の速球王だが、有名なのは速球よりノーコン。ヘルメットがない時代だからさぞ怖かっただろう。日本初のワンポイントリリーフ投手でもある。

1949

藤本英雄

下関商‐明治大‐ジャイアンツ‐ドラゴンズ‐ジャイアンツ

防御率・

ノーヒッター

スライダー

戦前は豪速球投手だったが戦後は肩を壊して技巧派。スライダーを編み出して戦線復帰。沢村賞に本格派であることという条件はないが、できれば本格派にやってほしい。

1950

真田重男

海草中‐朝日‐ロビンス

速球・ドロップ

球の重さ

天才・嶋清一卒業後の海草中甲子園連覇の立役者。戦前にプロ入りしたが真価を発揮したのは戦後。剛球とドロップでこの年39勝。足上げの写真が残っているが試合ではやらなかったらしい。

1951

1952

1954

杉下茂

帝京商‐明治大‐ドラゴンズ

速球

フォーク

杉下といえばフォークだが、1試合に10球以内しか放らず、後は速球だった。本人に言わせれば速球が145km/h以上出なければフォークは鋭く変化しないという。速球も一球品。

1953

大友工

大阪逓信講習所‐ジャイアンツ‐バファローズ

横手投げ・ナチュラルなスライダー・シュート

横手投げからの速球はナチュラルにスライドしたりシュートしたりした。今でいうムービングファーストボール。しかし沢村との共通点は「?」

1956

1957

1958

金田正一

享栄商高‐スワローズ‐ジャイアンツ

速球・ドロップ

さわやかさ・利き腕

ご存知400勝投手だが、沢村賞は3年連続受賞の3回だけだから、本当の全盛期はこの期間だったことが分かる。繰り返し「俺とサワさんとどちらが速い?」と周囲に質問していたという純情さも。

1959

1965

1966

村山実

住友工高‐関西大‐タイガース

フォームのダイナミックさ・速球

口数の多さ・フォーク

ダイナミックなフォームからの速球は一級品だったが、より有名だったのが3種類のフォーク。指の間に切れ目を入れてより深くボールを挟み込もうとしたこともあるという。

1960

堀本律雄

桃山学院高‐立教大‐日本通運‐ジャイアンツ‐オリオンズ

所属チーム

横手投げ

一年目だけの活躍、横手投げからのシュートとスライダーが武器。所属チーム以外に沢村との共通点が見出せない。

1961

権藤博

鳥栖高‐ブリジストン‐ドラゴンズ

速球・ドロップ・連投

皮肉屋・指導者としての成功

「権藤権藤雨権藤」と言われた酷使、大きく落ちるドロップは沢村を髣髴とさせる。石本秀一(タイガース‐カープ監督)は「沢村を思い出させる」と。肩をいためて野手に転向しようとしたが果たせなかったところも似ている。

1962

小山正明

高砂高‐タイガース‐オリオンズ‐ホエールズ‐タイガース

速球

コントロール・パームボール

小山といえば精密機械のようなコントロールとオリオンズに移籍してから投げ始めたパームボールが有名だが、若い頃は速球にも威力があったらしい。

1963

伊藤芳明

興誠高‐中央大‐日本生命‐ジャイアンツ‐フライヤーズ

所属チーム・ゴールデンルーキー

球の重さ

伊藤の球はミットにズシンと来るいわゆる「剛球」で、ジャイアンツであること以外に沢村との共通点が見当たらない。この年金田正一は30勝。なぜ19勝の伊藤だったのか…。

1964

バッキー

サウスウエスト大‐タイガース

ナックル・シンカー

バッキーはナックル・シンカーを操る技巧派。いくら優勝に貢献したといっても沢村との共通点は見当たらない。外国人にMVPはやれないから沢村賞にしたのか?

1966

1972

堀内恒夫

甲府商高‐ジャイアンツ

スクールボーイ・速球・ドロップ

投手寿命・皮肉屋

高校(中等)野球からプロ入りするや大活躍。豪速球と大きなドロップ、ずば抜けた野球センス。堀内と沢村の共通点は多い。平和な時代に生まれたおかげで投手寿命も長かった。選手生活晩年にも140km/h台の速球を投げていた。

1967

小川健太郎

久留米明善高‐フライヤーズ‐立正佼成会‐ドラゴンズ

不完全燃焼

投球フォーム

一度引退してもう一度プロに入りなおした変り種。王貞治相手に背面投げを試したりして話題を振り撒いたが、八百長疑惑で永久追放。沢村との共通点は無理やり選手生活を断念させられた点くらいか?

1968

江夏豊

大阪学院高‐タイガース‐ホークス‐カープ‐ファイターズ‐ライオンズ

速球・速球とスピードの変わらないカーブ・奪三振

利き腕・薬物

シーズン401奪三振は今も燦然と輝く大記録。プロ入り当時はカーブの投げ方も知らなかったというから驚きだ。ホークスに移籍してからはストッパーのパイオニアになった。この年しか受賞していないのはダーティ・イメージのせいか。

1969

1973

高橋一三

北川工高‐ジャイアンツ‐ファイターズ

ダイナミックなフォーム・速球

ノーコン・スクリューボール

左腕からのノーコン剛球は沢村賞よりも中尾輝三(京都商業-ジャイアンツ)二世の名がふさわしい。のちに球速が落ちてからはスクリューボールを操る技巧派に転進したが、最後までコントロールはいい方ではなかった。

1970

平松政次

岡山東商‐日本石油‐ホエールズ・ベイスターズ

体型・美しいフォーム・速球

タフさ・シュート

ダイナミックかつ美しいフォーム。甘いマスク、スマートな体型。沢村との共通点は多いのに沢村二世と呼ばれなかったのは「ガラスのエース」と呼ばれたひ弱さのためか。はたまたプロでは優勝できなかったからか。

1974

星野仙一

倉敷商高‐明治大‐ドラゴンズ

なにもかも

今も残る島岡イズムの信奉者。120km/hそこそこの速球を「気合」で速く見せる技巧派。およそ沢村との共通点がこれほど見つからない投手も珍しい。強いていえば若林二世。沢村賞はMVP替わりではないのに。

1975

外木場義郎

出水高‐電電九州‐カープ

ノーヒットノーランの回数・速球

体型

ダイナミックなフォームからの速球とカーブで沢村と並ぶ3度のノーヒットノーラン。しかも1度は完全。田淵幸一(タイガース‐ライオンズ)の捕手生命を奪ったビーンボールがなければもっと評価されたろう。

1976

池谷公二郎

静岡商高‐金指造船‐日本楽器‐カープ

速球

フォームのカッコ悪さ

招き猫のような手の引き上げ方がたまらなくカッコ悪いフォームだが、速球は一級品。カープ全盛時代を支えた一人。沢村賞にふさわしい。山口高志(市神港商高-関西大-松下電器-ブレーブス)とか池谷とか、「理にかなっていない」フォームの速球派をもう一度見たいと最近猛烈に思いだした。

1977

1979

小林繁

由良育英高‐神戸大丸‐ジャイアンツ‐タイガース

悲劇のヒーロー・細身・躍動感

横手投げ

カクンカクンした二段モーションの横手投げだが独特の躍動感があった。でも、2回も受賞するほどかね?江川問題のせいで悲劇のヒーローに祭り上げられたが、少し力が衰えるとあっさり引退してタレントに。最後まで野球にこだわってほしかった。

1978

松岡弘

倉敷商高‐三菱重工三原‐アトムズ・スワローズ

速球・カッコいいフォーム

身長・体型・勝負弱さ

球の速さだけなら同時代のエースたちの誰よりも速かったかもしれない。真っ向上段から投げ下ろすフォームもカッコよかった。だがその割に勝ち星は伸びず、沢村賞も優勝したこの年のみ。一本調子になりやすい癖があった。

1981

西本聖

松山商高‐ジャイアンツ‐ドラゴンズ

足上げ

球速・シュート

足上げが沢村を思い出させると話題になったが、シュートを武器にした技巧派で沢村との共通点は少ない。ライバルだった速球派の江川卓(作新学院高‐タイガース‐ジャイアンツ)がついに沢村賞を取れなかったのが皮肉である。

1982

1986

北別府学

都城農高‐カープ

コントロール・球速

高校のときは速球派だったが、プロ入りしてからは地味なフォームからヒュウッと投げる精密機械のような技巧派。二度受賞しているが沢村との共通点は感じられない。しいて言えば小山正明二世だろう。

1983

遠藤一彦

学法石川‐東海大‐ホエールズ・ベイスターズ

速球

体型・フォークボール

下半身をあまり使わずに上背を生かして投げる大リーグ風のフォーム。速球もフォークも一流だった。弱小球団だったために優勝からは遠かったが、沢村賞は彼のような投手のためにあると信じる。

1985

小松辰雄

星陵高‐ドラゴンズ

速球

カーブが曲がらない

スピードガン第一世代の速球王。強力な背筋(背筋力300kg)を生かしてアーム式でブン投げるフォームは沢村二世というより尾崎行雄(浪華商高‐フライヤーズ)二世というにふさわしい。

1987

桑田真澄

PL学園高‐ジャイアンツ

ドロップ

ダーテイーイメージ

清原和博(PL学園高‐ライオンズ‐ジャイアンツ)に決まりかけていたジャイアンツのドラフト1位が桑田になったのは甲子園では投げなかったドロップの存在が知れたかららしい。勝負強さと投球術は沢村二世というより吉田正男(中京商業-明治大-藤倉電線)二世にふさわしい。

1988

大野豊

出雲商高‐出雲市信用組合‐カープ

親孝行・速球

泥臭さ

40歳まで活躍できたのは強靭な下半身から繰り出される速球があったから。最後まで速球勝負にこだわった彼も沢村賞にふさわしいが、カープの投手に共通するフォームの泥臭さが…。

1989

1995

1996

斎藤雅樹

市立川口高‐ジャイアンツ

球のノビ

横手投げ・シュート・スライダー

横手投げながら上向きにスピンのかかった速球は抜群のノビがあった。シュートやスライダーにも威力があったが、斎藤のピッチングを支えたのはやはり速球。沢村賞3回も納得。

1990

野茂英雄

成城工高‐新日鉄堺‐バファローズ‐ドジャーズ他

速球・三振・大リーグ

ノーコン

パリーグの受賞第一号。野茂ほどの真性オーバースローは過去に堀内庄(松商学園高‐ジャイアンツ)くらいだろう。速球・三振奪取率・大リーガー相手の快投など沢村を思い起こさせる要素は多い。違うのはノーコンか。

1991

佐々岡真司

浜田商高‐NTT中国‐カープ

速球

フォームのカッコ悪さ

若い頃の速球は一級品だったが、左腕の使い方がヘタで泥臭いしゃくるようなフォームは沢村二世より別所毅彦(滝川中-ホークス-ジャイアンツ)二世の名がふさわしい。もう1度復活してほしい。

1992

石井丈裕

ライオンズ‐ファイターズ

速球

パームボール

日本シリーズでの防御率歴代1位投手。それにしてもパームボーラーというのは現代野球では短命を運命付けられているのだろうか。藤沢(ドラゴンズ)・木田(ファイターズ)・石井と続くパームボーラー短命の系譜。

1993

今中慎二

大阪桐蔭高‐ドラゴンズ

速球・ドロップ

利き腕・おとなしいフォーム

左腕からのノビのある速球と大きく落ちる緩いドロップは沢村というよりも松井栄造(県岐阜商‐明治大)二世。早すぎる引退は残念。沢村は速球とドロップの球速差がないのが「売り」だった。

1994

山本昌広

日大藤沢高‐ドラゴンズ

一目みて本人とわかる個性

スクリューボール

スクリューボール中心の技巧派。沢村との共通点は見つけるのが難しい。しかし伊勢海老がボールを投げているような不思議なフォームはどんな遠くからでも本人と分かる。この個性は沢村と共通。今中の分まで長く活躍してほしい。

1997

西口文也

県和歌山商高‐立正大‐ライオンズ

躍動感・速球

サイド気味のスリークォーター

踊るようなフォーム(「タコ踊り」と揶揄する人も)からの速球はすばらしいキレがある。もっと評価されていい投手の一人。ライオンズの投手陣は最近松坂の陰に隠れた印象があるが、実は好投手ぞろいである。

1998

川ア憲次郎

津久見高‐スワローズ‐ドラゴンズ

速球

シュート

速球にも威力があるが基本的にはシュートピッチャー。沢村賞は受賞基準をもう一度考えないとどうしても最多勝とダブったり、準MVPになってしまう。沢村との共通点を全面に出したほうがいいのでは。

1999

2002

上原浩治

東海大仰星‐大阪体育大学‐ジャイアンツ

速球

ナックル・フォーク・内野手投げ

球威・球速ともに十分だがなぜか沢村賞がピンと来ないのは投げ方が内野手を思わせるからか。小さなフォームでビシビシ速球を決めるスタイルはむしろ野口二郎(中京商業-明治大-藤倉電線)二世だろう。2002年日米野球ではボンズ(ジャイアンツ他)から3三振。野口を全盛期にメジャー相手に投げさせたかった?

2001

松坂大輔

横浜高‐ライオンズ

躍動感・速球

甲子園での実績・スライダー

躍動感のあるフォーム、速球、丸っこい鼻の愛嬌ある顔。京商で沢村とバッテリーを組んだ山口千万石は「栄ちゃんの生まれ変わりや」と。早く肘を万全にして何回も沢村賞を取ってほしいものだ。

2003

2006

斎藤和巳

南京都高-ホークス

速球・カーブ

身長・鋭い目つき

豪速球と鋭いカーブが武器の本格派。リーグ優勝に貢献するパリーグ18年ぶりの20勝とくれば受賞は文句なし。それにしても日本の投手もでかくなったもんだ。頭も「赤ボーズ」でまるで桜木花道(バスケ漫画『スラムダンク』の主人公)。元ヤン?

2006年二度目の受賞。メジャーへの選手流出で弱体化したチームで獅子奮迅の活躍。プレーオフ最終戦での君の涙を忘れないぞ。

2003

井川慶

水戸商高-タイガース

速球・愛嬌のある顔・無口

チェンジアップ

こちらも快速球が武器の本格派。タイプは違うが投手にあるまじき愛嬌のある顔も沢村と共通。リーグ優勝に貢献する20勝。2003年度の沢村賞選考は文句なし。2人受賞もイキだね。沢村賞はセリーグだけとかいうくだらない決まりがなくなって本当に良かった。

2004

川上憲伸

徳島商高-明治大-ドラゴンズ

速球

シュート・カットボール

川上というとどうも星野元タイガース監督との先輩・後輩・師弟関係から「気合で投げる」というイメージがあるが、速球も威力十分。川上の変化球は米国では全部ファーストボールだから、文句なしの速球派。

2005

杉内俊哉

鹿児島実高-ホークス

速球・ドロップ

スライダー・利き腕

これだけ沢村賞を喜んでくれると、少々イメージが違っても何もいえなくなってしまう。それにしてもよほど下半身を鍛えたのだろう。ビターッと決まった重心は去年までと別人である。「沢村二世」のほかに「池永正明二世」の称号を差し上げたい。

2007

ダルビッシュ有

東北高-ファイターズ

速球

高身長

成績からもイメージからも文句なし。高身長と豪速球、異民族の血を持つ、異郷で生れて北海道に縁があった、と来たら「スタルヒン二世」の称号も差し上げたいが、沢村すら「知らない」そうだから、ましてやスタルヒンは知らないだろうなあ。

2008

岩隈久志

堀越高-バファローズ・イーグルス

速球・縦スラ

高身長・横スラ

この投手受難の時代に先発完投での23年ぶり21勝、防御率1点台は見事というほかない。というか、カムバック賞もあげたいくらいである。よく故障から立ち直った。それにしても190cm以上の投手が活躍するようになるとは、日本人もでかくなった。

2009

涌井秀章

横浜高-ライオンズ

速球のノビ

多彩な変化球

全然力の入っていない、というよりも脱力したようなフォームからよく伸びるコントロールされた速球がピュッとくる、手元で変化するいろいろな球種を持っている、というのは、沢村よりも小山正明二世か。いい速球を持っているのに同時代に躍動感のある速球派(村山・松坂)がいて「剛速球」といわれないところも似ている。

2010

2015

前田健太

PL学園高-カープ

フォーム・速球・ドロップ

身長

伸びのある速球とドロップを武器として真っ向勝負できる最近では少ない本格派である。ただ、振りかぶった時から力が入っている感じのフォームは上から投げる尾崎行雄(元フライヤーズ)のよう。2015追記:2010年段階でこう書いたが、沢村の試合中の映像が発見されてみると、実はマエケンのフォームは沢村ととても似ていることが分かった。まさに沢村二世である。大リーグでの活躍を祈る。

2011

2013

田中将大

駒大苫小牧高−イーグルス

速球

体格・タフさ

2013年の240敗は空前絶後だろう。甲子園でのハンカチ王子との投げ合いといい、まさにタフネスの名がふさわしい。闘志を前面に出す投球スタイルといい、300勝投手別所二世の称号を差し上げたい。肘を痛めて大リーグを席捲、とまでは行っていないが、日本人投手のすごいところをこれからも見せてほしい。

2012

摂津正

秋田経法大附高−JR東日本−ホークス

速球のノビ

コンパクトなフォーム・制球力

中継ぎイメージが強かったため受賞した時はちょっと意外な感じがしたが、身近でみた速球のノビは侮れない。バランスのとれた無駄のないフォームで長く活躍するに違いない。

2014

金子千尋

長野商高−トヨタ自動車−バファローズ

なで肩

多彩な変化球

頭の全く動かないフォームはコントロールの良さを保証している。投げているのを見ても沢村イメージはない。多彩な変化球と相まって若林二世か。今度こそ味方の援護を得てノーヒッターになってほしいものだ。

2016

K.ジョンソン

ウィチタ州立大学-レッドソックス-パイレーツ-ツインズ-カープ

肩甲帯の柔軟性

身長

ゆったりしたフォームから柔軟な肩甲帯を生かして投げ込んでくる速球とカーブは沢村というより金田正一を思わせた。G.バッキー以来の外国人投手の受賞は野球の国際性をよく表している。

2017

2018

菅野智之

東海大相模高-東海大-ジャイアンツ

速球

スリークォーター

身体を沈み込ませてサイド気味のスリークォーターから投げ込んでくるフォームは藤本英雄を思わせたが、受賞後はメジャーの固いマウンドを意識したのか股関節をロックさせた沈み込まないフォームになった。日本人投手はどういう訳かこのフォームに改造すると不調になる人が多い。捲土重来を期待している。

2020

大野雄大

京都外大西高-佛教大-ドラゴンズ

腕の振り

体幹の使い方

体幹を大きく捻らせて元に戻る反動でコマのように回転しながら投げてくるフォームは手がもう少し横から出たら梶本隆夫そのままである。この身体の使い方と本格オーバースローの腕の振りのミスマッチは球の威力と打ちにくさにつながっていると思われるが、肘や肩への負担も大きいのではないだろうか。

2021

2022

2023

山本由伸

都城高-バファローズ-ドジャース

速球のノビ

バックスイング

この人のフォームを最初に見た瞬間、元カープの福士敬章(張明夫)が彷彿した。それくらいこの二人のフォーム(腕の振り)は似ている。当時は比べるもののなかった福士の独特のバックスイングは、打者から一瞬ボールを見えなくさせるためだったのだということを山本を見ていて初めて悟った。ここから150超の速球が来たらさぞ打ちづらいだろう。メジャーでの活躍を期待している。

 

[沢村二世といわれた投手たち]

投手名

経歴

沢村との共通点

沢村との相違点

寸評

神田武夫

京都商‐ホークス

出身校

呼吸器

昭和15年の選抜大会で準優勝。ホークスに入って大活躍するが、実は肺結核で血染めの投球。先輩沢村より早く昭和18年に病死。

中尾輝三

京都商‐ジャイアンツ

出身校・速球

ノーコン

先輩沢村を慕ってジャイアンツ入り。中尾といえば何より有名なのが速球以上に「ノーコン」。ヘルメットのない時代だからさぞ怖かっただろう。

金田正一

享栄商高‐スワローズ

速球

さわやかさ

日本人は沢村亡き後金田にいたって初めて本当の豪速球を見たのだろう。出身校もキャラクターも利き腕も何もかも違う投手に「沢村二世」の名を冠したのだから。

井口和人

京都商高‐同志社大‐トヨタ自動車

出身校・足上げ・ドロップ

身長・卒業してからの精進

身長170cmない小柄ながら足上げの豪快なフォーム。球速は140km/hそこそこだったがドロップは本当に1m落ちていた。筆者がこの目で見たから間違いない。

BBM社の『高校野球忘れじのヒーロー』によると筆者が見たのは右肩脱臼以後の井口だったらしい。全盛期の速球が見たかった…。大学時代、近畿大学との関西学生リーグ優勝決定戦、優勝の美酒をありがとう!

西本聖

松山商高‐ジャイアンツ‐ドラゴンズ

足上げ

速球のスピード

足を上げる以外には、シュートが武器だったところが晩年の沢村との共通点か…。

森慎二

岩国工高-新日鉄君津-ライオンズ

足上げ・速球

注目度

高々と足を上げるフォームといい、伸びのある速球といい、日米野球の好投といい、「沢村二世」の資格十分なのに誰もそう言ってくれないのが気の毒。自分で名乗ったらどうだろう。

沢村拓一

佐野日大高-亜細亜大-ジャイアンツ

足上げ・速球

体形

80年ぶりにジャイアンツに現れた「沢村」。本人も十分意識しているらしく、最近はよく「足上げ」をするようになった。実力は十分だから次は先発として活躍して沢村賞を取り、名実ともに「沢村二世」になってほしいものだ。

 

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