四回表:沢村栄治漫画館

2008.2.22

さすがプロ野球の「始祖」だけあって、沢村栄治はさまざまな漫画に登場している。沢村を主人公にしたものもあるが、ギャグ漫画にもたびたび登場しているところに沢村人気の根強さ、裾野の広さを感じる。本格野球漫画でも久々に沢村がモデルと思われるマンガが登場した。

漫画名

作者

出版社・回数

登場場面

巨人の星

作:梶原一騎

画:川アのぼる

アニメ

『栄光のピッチング』

原作には沢村の登場はない。主人公飛雄馬が自分の指示を無視して練習しているのを知った医師が、沢村の話をして飛雄馬を諭す。たしか手榴弾投げのシーンが…。

1.2のアッホ!!

コンタロウ

集英社:「拒人第三軍」

島流しにされた巨人の三軍に戦争で記憶をなくした沢村が混じっている。三軍の長老が沢村になりすまし、本当の沢村はセカンドから長老のフォームに合わせてホームに投げ、連載当時の巨人の1.2番、柴田・高田を連続三振に討ち取るが、3番王には打たれる。

すすめ!パイレーツ

江口寿史

集英社:単行本第11巻35ページ

不振に悩んで自殺したチームメートから半ば強制的に物故者たちの亡霊と練習試合をさせられる。投手沢村、4番ベーブルースはいいとして、ショートはエルビス・プレスリー、捕手は力道山。作者の好きな物故者を全部登場させたんじゃないだろうか。この項に関しては野球チケット博物館管理人帷子ノ辻さんから情報をいただきました。

アストロ球団

作:遠崎史朗

画:中島徳博

集英社:第1回ほか多数。

太平洋戦争中の南洋諸島。明日の玉砕を控えて、沢村が現地の少年シュウロに心情を吐露する。彼の意志を継ぐために成人したシュウロがボールのあざのある超人9人を探し、アストロ球団を結成する。本拠地アストロ球場には沢村の巨大モニュメントがあるほか、ふんだんに沢村登場。でも絵の下手なのがイタイ!

あぶさん

水島新司

小学館:単行本第9巻「ビデオの誠さん」

戦前の回想シーンでホークス鶴岡一人(主将。後監督)が沢村からサヨナラヒットを放つ。足を高く上げたシーンとボールをリリースした後の2コマのみだが沢村のフォームの特長がよく描かれている。しかし、意外なことだが、鶴岡と沢村は実際には対戦していない。鶴岡の入団した昭和14年、沢村はまだ軍隊から帰還しておらず、帰還した15年には鶴岡が応召し、そのまま終戦まで球界復帰できなかった。鶴岡は野球人としては戦後派なのである。沢村栄治人名辞典さ〜と参照

硬派!埼玉レグルス

作:滝直毅

画:山本コーシロー

集英社:最終回

アストロより酷い殺人野球漫画。試合でバンバン人が死ぬ。レグルスの監督が相手チームを全員殺した後、なぜか沢村の姿になって昇天する。こんな漫画に沢村を使うなよな…

鎌倉物語

西岸良平

双葉社:調査中

鎌倉魔物チームと人間の鎌倉支配を賭けた野球の試合で、劣勢になった人間チームの助っ人として、恐山刑事に乗り移って登場。妖怪チームからバッタバッタと三振を奪い、鎌倉を守る。王貞治の生霊も登場。

栄光なき天才たち

作:伊藤智義

画:森田信吾

集英社:第9巻「沢村栄治」

沢村が主人公として描かれている漫画。ノンフィクションと銘打っているが、作者の想像で書かれた場面も多い。沢村の「台湾沖で戦死」とは「ボカチンで溺死」を婉曲に表現してあるのだが、真に受けて劇的な戦死に仕立て上げているのがどうもなじめない。それ以外はよく調べてあっていい。沢村が関西弁なのがリアリティ。特に内務班で点呼の4を標準語的に「シ」でなく関西弁で「よん」と言ってしまいビンタを叩かれるところなど絶品である。

クラッシュ!正宗

作:小林信也

画:たなか亜希夫

双葉社:第9巻83球「メジャーの掟」84球「恐るべき殺人打球」

主人公正宗が地方のノンプロを率いてメジャーの一流選手たちと対戦する球場のマウンドには沢村のサインボールが埋められている。沢村の幻影がマウンドに現れ、正宗にアドバイスする。

夢の球譜

作:川原正敏

画:きむらみつお

講談社:

単行本後半

沢村と景浦の対決を主に大和球士の著作をソースにしてまとめたと思われる作品。これで沢村を主人公にした作品は本当に最後だろう。絵もストーリーも誇張がなくよくまとまっている。『野球の妙技』という、職業野球の選手たちの技術を伝える貴重なフィルムに登場する、水原茂の映像を基にしたと思われる絵などもあるから、作家も画家も相当昔の野球が好きらしい。もっとページ数があれば、二人の甲子園出場、沢村の日米戦のときの活躍や景浦の立大時代の伝説など、面白い話がいくらでもあるのだが。これが今の子どもたちには精一杯か?沢村栄治のライバルたち 沢村栄治に関する誤解・曲解・崇拝に反論する参照。

もうひとつの偉人伝

石塚勝美

たなかじゅん

集英社:第1巻「スタルヒン」

スタルヒンの剛球がいかにすごかったかを証明するための比較対照として登場。作者の絵が下手なため、水原も沢村も顔が一緒。老け顔もいいとこでどこがスクールボーイやねん、という感じ。『栄光なき天才たち』の漫画の沢村を模写したんじゃなかろうか。フォームもデタラメ。伝記漫画は顔や体型を似せてもらわないとドッチラケである。

さとみ派遣伝

作:西ゆうじ

画:おだ辰夫

竹書房「まんがライフオリジナル」97年5月号

『麩菓子とグローブと少年と』に登場。座敷わらしのような少年が残したグローブに沢村栄治の名前があった。

野球まんが果糖水的生活08

週刊WEBマガジンSAKANAFISH

http://www.ad.

wakwak.com

/~sutemaru/

sutekimanga/

katosuilife/

1-10/8/

ネットで見つけた訳わからん漫画。ガムさんというわけわからん人物(チューインガムの化け物か?)が少女に野球をコーチする。なぜかあらすじの中で「ガムさん(沢村栄治)」となっている。わからん…。

American Dream

北条司

集英社「少年たちのいた夏-Melody of  Jenny-に収録

沢村がモデルの日本人青年投手が米国遠征中に元投手で今も野球を捨てられないスカウトと友情を結ぶ。日系人少女との淡い恋も。スカウトも少女も投手本人も米国で投げることを望むが、当時の険悪な日米関係がそれを許さなかった。やがて日米戦が始まり、投手とスカウトは互いの母国にとって象徴的な戦場であるレイテ沖と硫黄島で戦死。少女は日系人収容所に送られて消息不明となる。米国遠征時の沢村拉致未遂事件に着想を得たらしいが、よくぞこれだけ話をロマンチックに広げられるもんだ。沢村のフォーム、全日本のユニフォーム、当時の風俗なども、よく調べてある。

伝説の投手

あや秀夫

リイド社「白球物語」に収録

沢村をモデルにした投手から三球三振をくらった打者が、戦地で投手と出会い、心を通じ合わせるが、投手は足を負傷しており、やがて置き去りとなり死んでいく。作者は吉原正喜(熊本工-ジャイアンツ-戦死:戦前最高の捕手といわれる)の最後についても知っているようだ。戦後野球に復帰して大打者となった主人公はこうつぶやいて打席に向かう。「俺はもうベテランの域に入ったが、生きている限りグラウンドに出てがんばらなくちゃならない。今度、もし戦争がおきても俺は英霊になるより非国民としてずっと野球をやり続けるつもりだ。」泣きました。

4番サード

青山剛昌

小学館

名前だけは長嶋茂雄で三振王の主人公が沢村栄治から「ベーブルースのバット」をもらい、それを使って強打者に変身する。主人公の活躍で母校は甲子園出場を果たすが、「沢村栄治のグローブ」を持ったライバルが現れて…。どうでもいいが、最初の打席のホームラン、どうみてもエンタイトル・ツーベースにしか見えないのだが。

ダイヤのA(エース)

寺嶋裕二

講談社

廃校が決まった中学から名門の高校野球部に進学した「沢村栄純」。スピードはたいしたことないが動いて打ちにくい球を投げる素人同然の少年が、さまざまな人との出会いで野球に眼を開かされていく。沢村が現在に生れたらこういうふうに成長していくのでは、と思わせる楽しさを持った漫画である。

 

 

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